学校長挨拶

〇時代を超えて活躍できる技術者を育成します

テクノロジーの進展は加速度を増し、産業構造や社会生活がダイナミックに変化する現代においては、社会において求められる能力も刻々と変わり続けています。このような時代背景のなか、本校は新たな時代のニーズに対応した高度専門人材を育成する高等学校として、平成16年(2004年)に再編統合を経て、ここ脇浜の地に開校し創立20周年の節目を迎えました。

次の大きな変革として人工知能(AI)、ビッグデータ、Internet of Things(IoT)、ロボティクス等の先端技術があらゆる産業や社会生活に取り入れられ、これまで人間が担ってきた多くの領域への置き換わりが一層進み、社会の在り方そのものが劇的に変わる Society5.0 が到来しつつあります。

これまで以上にテクノロジーが高度に発達する時代を前に、科学技術高等学校に学ぶ生徒たちが、将来どのような時代になろうとも、人間ならではの感性を働かせながら柔軟に変化を乗り越え、社会をリードし、人生をより良く豊かなものにしていくために、本校で身に付けるべき資質とは何か、それらを獲得するための学びとはどうあるべきかについて問いを立てながら、教職員一丸となって特色ある教育活動の推進に取り組んでいるところです。

〇人に社会に優しいバランス感覚ある技術者を育成します

工業の専門高校である本校では、生徒一人一人の興味関心に応じ、様々な社会課題の解決や便利で安全な生活環境の実現に向け、知識と技能の修得に取り組んでいます。

ChatGPTを始め、新しい技術が生まれるときには、正の側面に傾倒する傾向があり、弊害が無視できなくなってから自己規制や法律等が定められることが多いものです。

新しい技術を生み出し社会に提供する側の立場となる生徒を育成する本校では、技術を学ぶだけに留まらず、どのような技術であっても、必ず正と負の両面があることを念頭に置きながら、生み出した技術や製品が社会に及ぼす影響を考慮し責任ある行動をとる姿勢を身に付けていかなければなりません。

本校では、安全確保や法令順守はもとより、人権や著作権は侵害しないか、環境負荷に配慮され持続可能であるか、本来の目的以外へ転用されることはないかなど多面的に技術を評価する機会を設けることで、技術者倫理の涵養に力を入れており、人に社会に優しいバランス感覚ある技術者の育成に取り組んでいます。

〇個性の伸長を図り出る杭を伸ばします

高度経済成長期が終焉を迎えて久しく、さらに少子高齢化が拍車をかけて低成長時代が長期化する中で、この混沌とした時代を打破し、明るい未来を見せてくれる。そんなリーダーが現れるのを社会が求めていると感じています。

そのためには、まず学校教育から変えていかねばならないと考えています。

これまで企業統治の観点から指示されたことを、忠実に遂行することが良い人材の条件とされ、組織としてのガバナンスの維持が優先され個性的な尖った人材はむしろ歓迎されてはいませんでした。

しかし、新興国が台頭し、これまでのビジネスモデルが通用しなくなる中で、チャレンジなくして成長もないことを認識し、積極的に未踏市場に活路を求めて投資を始めています。

このような新しい時代をけん引するリーダーとしての資質とは何かを俯瞰すると、唯一解が存在しない中で、0から1を生み出せる豊かな創造性と独創性を有するとともに、できない理由ではなく、できる理由を探求し続けられる堅忍不抜の思考を兼ね備え、道のないところに道を敷くことのできる突破力のある人物像にたどり着きます。

本校では、このような次世代のリーダーとなる人材を育成するため、個性の伸長を図り、出る杭を伸ばすことに力点を置いた教育に力を注いでいます。

生徒一人一人の興味関心に応じた個別最適な学びの提供とともに、やりたいことが肯定される環境下で、失敗から学ぶことを通じて成功体験を重ね、自分の無限の可能性を感じながら価値観の基礎となる物差しを確立し、将来、日本のみならず、世界のリーダーとして活躍されることを心から期待しています。

神戸市立科学技術高等学校

校長 河野 彰信